第2回 2009年9月1日
民主党 308議席
(解散時勢力の112議席から196議席の増)
自民党 119議席
(同303議席から184議席の減)
公明党 21議席
(同31議席から10議席の減)
共産党 9議席(増減なし)
社民党 7議席(増減なし)
国民新党 3議席(同5議席から2議席減)
■民主党政権が誕生。「2009年体制」の始まり
2009年8月30日に投開票された第45回衆院総選挙は、上記の通り、民主党が3倍近く議席を増やした。そして日本で初めての「本格的な政権交代」が実現した。
ひとつの政党が308議席もとったのは戦後初めてのことだ。自民党が結党され、左右社会党が統一した1955年を、長く「55年体制」と呼んできたが、今回の変化は「2009年体制の始まり」と言ってもいいのではないだろうか。
事前の世論調査などから、自民党が負けそうなことは予想できた。選挙戦の最中、何人かの自民党議員の演説会場を覗いたが、そこで各陣営の幹部は支持者に向かって「今度の選挙で自民党は負けるでしょう。しかし、うちの先生だけは落とさないで下さい」と“哀願”していた。それを聞けば、「自民党自身も負けを覚悟しているんだな」と思ったものである。
ただし“半永久政権”と言われてきた自民党政権が、これほどの地すべり的な敗北を喫するとは予想していなかった。「自民党の地力からすれば、130議席から150議席ぐらいは取るだろう」と見立てていたからだ。私の予想は見事にはずれたわけだが、これこそが、小選挙区制が持つダイナミズムであり、怖さだということだろう。
■16年前、カナダで起きた“大事件”に似ている
政権与党が惨敗したケースは16年前、カナダでも起きている。
1993年10月、カナダで総選挙が行われた。選挙制度は単純小選挙区制である。日本のように比例代表の部分はない。
当時の政権与党(第1党)は進歩保守党で、党首はキム・キャンベル氏だった。カナダ初の女性首相でもあった。カナダでは戦後長く、「保守」を標榜する進歩保守党と、「中道左派」のカナダ自由党による2大政党制の時代が続き、この2党が何度も政権交代を繰り返してきた。
さて選挙の結果はどうだったか―。
なんと進歩保守党が169議席から2議席に大激減したのだ。キャンベル首相の経済失政が敗因だった。議会制民主主義が発達した先進国で政権与党がここまで壊滅的な敗北を喫した例は珍しく、単純小選挙区制の怖さを実証したケースとして語り草になっている。
ちなみに「超ミニ政党」になってしまった進歩保守党は、この時点から4年後の総選挙で20議席まで回復したが、かつての勢いを取り戻すことはできず、2003年にはカナダ同盟という別の政党と合併し、カナダ保守党に衣替えした。
以上を前置きにして、今回の日本の選挙結果(小選挙区部分)を詳細に見るとー―。
得票率 議席率
民主党 47% 74%
自民党 39% 21%
(小数点以下を四捨五入)
民主、自民党の得票率の差は8ポイントしかないのに、議席率の方は53ポイントもの差がついていることが分かる。カナダのケースほどではないが、これだけの違いが出たわけで、こういうことが起きるのが小選挙区制の特徴である。
もう1点、今回の結果を見て思うのは「竹下登元首相は草葉の陰で『しまった。小選挙区制に変えるんじゃなかった』と舌打ちしているのでは」ということだ。
1988年春、リクルート疑惑が神奈川県川崎市で発覚した。事件は燎原の火のように中央政界に拡大していった。自民党の派閥領袖や幹部などが「濡れ手で粟」式にリクルート・コスモス社の未公開株を受け取っていたことが次々に明るみに出ていった。
その時である。竹下首相が「政治家が、企業からこんなものを受け取らざるを得ないのは選挙にカネがかかるからだ。特に今の中選挙区制が悪い。小選挙区制に変えよう」と言い出したのは。
当時、私は首相官邸キャップを務めていた。竹下氏の主張に対して「悪いのは制度ではない。カネをかけて集票してきた政治家自身が悪いんだ。政治腐敗に対する国民の批判をそらすため、選挙制度のせいにするのはいかがなものか」と思い、そういう趣旨の記事を書いたものである。しかし、自民党は一気呵成に小選挙区制導入を決めてしまった。理由は「政権交代可能なシステムを作る」ということだった。
日本では、小選挙区制は大政党に有利と長く言われてきた。古くは鳩山一郎氏や田中角栄氏が小選挙区制導入論をぶちあげ、これに対して野党が強硬に反対し、実現しないまま推移していた。
にもかかわらず、竹下氏ら自民党幹部が急に小選挙区制導入を言い出した背景には、実は「大政党に有利だし、小選挙区制に変えれば、さらに政権を維持できる」という考えがあったからだ。事実、自民党幹部からそういう言葉を聞いたことがある。
ところが実際は違ったのだ。大政党に有利な面があるのは事実だが、大政党であっても、失政や失態を続ければ、カナダの進歩保守党や、日本の自民党のように惨敗を喫し、政権の座を追われることもあるということだ。「選挙制度に詳しい」と自慢していた竹下氏も、そこまでは想定外だったのかもしれない。
「中選挙区制のままにしておいた方が良かったかな」。もしかしたら竹下氏は今、舌打ちに続けて、こうつぶやいているかもしれない。
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